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2016/2/9 UP

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プラントをこの手で守る――プロセスエンジニアの技術者魂と創造力

化学産業は「すべての産業の要」と言っても過言ではないだろう。近年は主に、中東を含むアジア地域の新興国の発展を受けて、世界的に化学プラントの建設案件が増加している。そこで大きな活躍を見せているのが、高い技術力を誇る日本の老舗企業だ。中でも三菱ガス化学は、1980年代前半から積極的にアジアのマーケットに目を向け、確かな実績を積み上げてきた企業である。
三菱ガス化学(以下、MGC)は『社会と分かち合える価値の創造』をグループビジョンに、創業以来、常に時代を先取りする新しい技術や素材の開発に取り組んできた。基礎化学品からファインケミカル、機能材料まで──多彩な製品を生み出す研究開発や製造のフィールドには、化学系出身者だけにとどまらず、様々なバックグラウンドを持った人材の活躍の場が用意されている。今回はプロセスエンジニアとして、プラントの運転管理に携わっている板倉大介氏にお話を伺った。


[ PROFILE ]

板倉大介(いたくら・だいすけ)
2000年入社。新潟工場研究技術部に配属となり、プラントの海外への技術輸出を担当。2006 年より 2 年間、サウジアラビアの「SAUDI METHANOL COMPANY」に出向し、プロセスエンジニアとして現地でメタノールプラントの運転管理を担う。新潟工場に戻ってからは、工務部保全グループで工場内設備の保全業務に従事。現在は新潟工場第一製造部アンモニア・ユーティ課で課長代理を務める。


プラントの命運を握る、プロセスエンジニアのやりがい

化学プラントにおけるプロセスエンジニアは、非常に重要な役割を持つ。プラント全体機器設計や配管設計などの基本仕様の決定や管理を司るため、基本的な化学工学の知識はもちろん、機械工学や制御工学まで広範囲にわたる知識が必要となる。言わば“プラントの指揮者”と呼べるポジションだ。

そんな肝心要な職務を担う板倉氏、具体的にどのような仕事を日々こなしているのだろうか。

「現在は、新潟工場の製造部門のうちユーティリティを管轄する部署にて、工場内で使用される化学品原材料(アンモニア)、蒸気、電気、用水、排水処理の運転・設備管理を担当しています。また、2016年末までに新たにスチームタービン発電機を導入する計画があり、そのプロジェクトにも参加しています」

日本の高度経済成長を支えてきたコンビナート施設の多くは、建設されてからすでに30 年以上が経過しており、その半数は40 年を超える。このため、設備の老朽化や経年劣化に起因する問題にどう対応していくかが、国内の各製造施設にとっては重要な課題となっている。それは、板倉氏が勤務する新潟工場にとっても例外ではない。プロセスエンジニアは、従業員や周辺住民の安心と安全のために、数歩先にあるリスクについて考え続けている。

「化学プラントは危険物を多数取り扱うため、安全面のリスクを考えると、設備が壊れてから修理するのでは手遅れの場合もあるのです。そのため、弊社では自主的な保全ルールを定め、劣化の速度に応じて定期的に検査をしたり、内部を流れるガスなどの性質に合わせて損傷が起きにくい部材を使ったりしています。問題を未然に防ぐため、仮に起きたとしても迅速に対応するため、緊張感を持って日々の業務に当たっています」

責任の重い仕事であるからこそ、得られるものも比例して大きくなる――今の仕事のやりがいについて板倉氏に聞いてみると、いきいきとした表情でこう答えてくれた。

「私の所属する新潟工場では、約40 年稼働していたアンモニア製造装置があります。国内需要の減少および装置の老朽化などを背景とし、2015年7月末にアンモニア生産を終了したため、現在は稼働していません。これに伴い、アンモニア製造のために生産していた高圧スチームの有効利用を図る目的で、2016年末までに新たにスチームタービン発電機を導入する計画を進めています。こうした事例をはじめ、新潟工場はユーティリティ(プラントの運転に必要なライフライン)において、今まさに変革期に差しかかっているんです。長い歴史を持ち日本の産業を支えてきた工場の機能や設備を最適化して、未来につないでいくための一大プロジェクトに自分が参画できることに、大きなやりがいを感じています」

海外での業務経験で培った、率直に議論する体質と問題解決力

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堅実な仕事ぶりから社内でも信頼の厚い板倉氏。そんな同氏には「今の自分の基盤を成した、かけがえのない経験がある」と言う。それは、入社7年目にして赴任したサウジアラビアでの業務だ。

「2006年から2年間、サウジアラビアで弊社が現地企業と合弁で設立したSAUDI METHANOL COMPANYに出向し、プロセスエンジニアとしてメタノールプラントの運転管理の業務を担いました。日本人は現地副社長と私の2人だけで……言葉はもちろん、他国の文化や考え方の違いなど、業務上でいろいろな壁にぶち当たったんです」

今までの“当たり前”が通用しない職場環境で、どうしたら円滑に、そして気持ちよく業務が進められるかと、板倉氏は悩みに悩んだ。

「特に頭を悩まされたのは、現地スタッフとのコミュニケーションです。慣れない英語を使って業務の説明をするのは、本当に大変でした。また、現地では誰もが『私はこう思う』とはっきり主張します。それに対して、こちらも相手が納得するように説得、もしくは議論をする必要があります。コミュニケーションに四苦八苦した2年間でしたが、この海外赴任を経験したおかげで技術的な知識が定着したのと同時に、業務上でお互いの考えをストレートにぶつけ合う習慣が身に付きました。しっかりと議論をすることで業務の精度も上がりますし、何より信頼関係がより強固なものになるんですよね」

この海外赴任で得た“思ったことをぶつけ合う、議論をする”というスタンスは、現在の保全業務の現場でも大いに役立っているそうだ。

「設備に何らかの問題が起こった際は、時間との勝負です。プラントを長期間止めてしまえば、莫大な損害が発生してしまいます。現場の製造担当者と情報共有する中で、“自分はこう思う、こうしたい”という意見を出し合うことが、安全性とスピードのバランスを見極めながら最善の解を導くためには不可欠なんです。幸い弊社には年齢の上下に関わらず、現場で自由に発言できる文化が根付いています。理に適った意見であれば、若手の意見でも受け入れてくれるんですね。サウジアラビアでの経験があったからこそ、私は真っすぐと意見を言えるようになり、それによって業務に貢献できていると実感しています」

“独自開発へのこだわり”が生む、技術者たちのプライド

板倉氏は学生時代、機械工学科で材料工学について学んでいた。同級生の多くが機械、自動車、家電などのメーカーへと就職を決めていく中、なぜ板倉氏は化学メーカーを就職先に選んだのだろうか。

「機械とものづくりは切っても切れない関係です。だからこそ、たとえ機械系のメーカーでなくても、ものづくりの現場であれば“機械屋”は必ず必要とされます。私はそこで『“機械屋”の多いメーカーに行くのではなく、異なるバックグラウンドを持つ人が多い環境に身を置けば、より自分の知識や経験を生かせるフィールドを見出せるのではないか』と考えました。そんな観点で企業探しをした結果、MGCに出会ったんです」

入社の決め手となったのは「MGCが創業以来持ち続けてきた“独自開発へのこだわり”に対する共感だった」と、板倉氏は続ける。

「弊社の製品は、90 %以上が独自開発した自社技術から生み出されたものなんですね。他社の製品や技術に頼ることなく作り上げる“オリジナル”に強くこだわっています。研究室で実験を積み重ね、技術検討をかけ、パイロットプラントで試験生産を行った上で、商業用プラントで本生産に入る――こういったプロセスが自社内で一貫して行われているのです。『独自に研究・開発したものをプラントにしていく……そんなワクワクするような仕事に自分も加わってみたい』と思いました」

他社の技術や設備を組み合わせたプラントであれば、その心臓部は“ブラックボックス”となり、自社で手を加えることはほぼ不可能になってしまう。自社の独自技術に合わせて開発したMGCの製造設備は、心臓部から末端まで、あらゆる箇所の保全を自分たちで手掛けることができる。板倉氏は「プラントのすべてを司れるのが、弊社ならではの保全業務の醍醐味だ」と語気を強める。その言葉からは「自分たちのプラントは自分たちで守るんだ」という“技術者魂”が感じられた。

“独自開発へのこだわり”が生む、技術者たちのプライド

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板倉氏は学生時代、機械工学科で材料工学について学んでいた。同級生の多くが機械、自動車、家電などのメーカーへと就職を決めていく中、なぜ板倉氏は化学メーカーを就職先に選んだのだろうか。

「機械とものづくりは切っても切れない関係です。だからこそ、たとえ機械系のメーカーでなくても、ものづくりの現場であれば“機械屋”は必ず必要とされます。私はそこで『“機械屋”の多いメーカーに行くのではなく、異なるバックグラウンドを持つ人が多い環境に身を置けば、より自分の知識や経験を生かせるフィールドを見出せるのではないか』と考えました。そんな観点で企業探しをした結果、MGCに出会ったんです」

入社の決め手となったのは「MGCが創業以来持ち続けてきた“独自開発へのこだわり”に対する共感だった」と、板倉氏は続ける。

「弊社の製品は、90 %以上が独自開発した自社技術から生み出されたものなんですね。他社の製品や技術に頼ることなく作り上げる“オリジナル”に強くこだわっています。研究室で実験を積み重ね、技術検討をかけ、パイロットプラントで試験生産を行った上で、商業用プラントで本生産に入る――こういったプロセスが自社内で一貫して行われているのです。『独自に研究・開発したものをプラントにしていく……そんなワクワクするような仕事に自分も加わってみたい』と思いました」

他社の技術や設備を組み合わせたプラントであれば、その心臓部は“ブラックボックス”となり、自社で手を加えることはほぼ不可能になってしまう。自社の独自技術に合わせて開発したMGCの製造設備は、心臓部から末端まで、あらゆる箇所の保全を自分たちで手掛けることができる。板倉氏は「プラントのすべてを司れるのが、弊社ならではの保全業務の醍醐味だ」と語気を強める。その言葉からは「自分たちのプラントは自分たちで守るんだ」という“技術者魂”が感じられた。

持つべきは“主張”と“主体性”、未来の自分を描き出せ

就活中からキャリアの先を見すえ、自らの意志で定石とは異なる道を選んだ板倉氏に“これからの時代、どんな理系人材が求められるか”という質問を投げかけてみた。

「理系に限った話ではないのかもしれませんが……これからは一層、きちっと自己主張のできる人にニーズが集まると思っています。言われたことをただやるだけではなく、自分で考えて答えを導き出し主張できる力、どんな環境下でも自分なりの色を出せる力は、会社で働く上で大きな武器になるはずです」

最後に、これから進路の分岐点に立つ理系学生へのアドバイスを求めると、板倉氏は次のように語ってくれた。

「まずは『就職をして何をしたいのか』自分の考えを明確に持つ。どのような研究者、あるいはエンジニアになりたいのか……自分の将来像を具体的に思い描いてみましょう。就職はゴールではなく、これからずっと続く社会生活のスタートです。ただ、選んだ道によっては、当初思い描いた将来像とは全然違った方向に進むかもしれません。けれども、それでいい。今のステージに合わせて、将来像は変化するものです。大事なのは『その時々で自分ができることを考え続け、行動をブラッシュアップしていくこと』です。自分らしく、自分のできることを追求していけば、きっと幸せなキャリア形成に繋がります」

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