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2016/1/29 UPDATE

  • Interview

流行り廃りではなく、末永く使われる工場を創る――世界に羽ばたく若手プラントエンジニア

近年、日本の製造業の拠点は世界中に拡がっており、生産に不可欠な素材に関しても、国内同様のハイグレード品の現地調達ニーズは高まる一方だ。それに合わせて「プラントエンジニア」の活躍の場も国内外に大きく広がっている。
ソフトからハードまで多岐にわたる仕事が存在するエンジニアリング。とりわけ産業界でも最大規模の設備産業である、鉄鋼メーカーのプラントエンジニアとは一体どのような役割を持つ仕事なのだろうか。新日鐵住金株式会社で活躍する若手プラントエンジニア・土佐勇介氏にお話を伺った。


[ PROFILE ]

土佐勇介(とさ・ゆうすけ)
1987 年生まれ。工学研究科機械理工学専攻修了。在学中、振動工学を専攻し、課外活動として一般社団法人「日本機械学会」の関西支部、学生会の会長を務めた。2011 年、新日鐵住金株式会社に入社し、現在は機械系プラントエンジニアとして、国内設備の改造や保全、海外の工場建設を担当している。


要素技術を結集して工場を創り上げる「プラントエンジニア」

土佐氏は入社5年目ながらも、これまで国内外で大きなプロジェクトに参画してきた。そんな同氏にプラントエンジニアの仕事の内容について、わかりやすく解説してもらった。「プラントエンジニアとは、簡単に言うと“工場などの生産設備の企画や設計、建設をする技術者”のことです。特に鉄鋼業のプラントは大規模かつ複数の要素技術の集合体なので、プラントエンジニアは専門分野が細かく分かれていて、機械系の他、電気設備やシステムを扱う電気系、建物や基礎を扱う土木建築系など、さまざまな専門性を持ったエンジニアがおり、世界最高水準の鉄鋼製品を製造する先進的な工場を作り上げるという同一の目的の元、これらのエンジニアが一堂に会して、力を合わせてプロジェクトを推し進めていきます。この中で、私は機械設備を担当するとともに、全体を取りまとめる立場にあります。当社では現在、国内の製鉄所の工場建設、設備改造だけではなく、海外での工場建設も数多く手がけています。特に、私の担当する薄板系のラインでは海外における自動車生産ニーズに後押しされて、国外を拠点とする業務も増えているんです」

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異文化の地、インドでの工場立ち上げで感じた、これまでにない達成感

入社3年目の2013年11月から約半年間、土佐氏は経済成長著しいインドで、工場の立ち上げ業務に携わっていた。そこではどのような仕事を担当していたのだろうか。

「インドの大財閥タタ・グループの中核をなす鉄鋼会社『タタ・スチール』との合弁で、自動車用の鋼板製造工場を建設しました。全体で2年半のプロジェクトの中で、私は最後の約半年間の試運転業務を担当しました。これは工場の設備が完成した後に、実際にラインを稼働させて最終調整をしていく仕事です。鉄を加熱して品質を決定づける焼鈍炉の温度が狙った温度まで上がるのか、できあがる鋼板の品質は安定しているか……クライアントの要望や、実際に立ち上げ後に操業するメンバーの作業性などを考慮して、細かい部分まで丁寧に調整していきます。例えば、海外では日本に比べて電力供給が不安定なので、停電が起こりやすいんですね。実際に動かしてみてからそのリスクに直面した時に、追加の設備導入をするのか、プラント制御装置のソフトウェアを改造するのか、それとも操作者の手動操作でバックアップできるような仕組みを作るのか……。納期やコストも踏まえながら、環境と状況に合わせて最適な選択をしていく必要があります。現場では想定外の課題が日々見つかるので、総合的な判断力が問われるんです」

日本とは環境も文化も大きく異なるインドでの工場建設。思いもよらないトラブルも多かったそうだが、それだけに「やり遂げた時の達成感はひとしおだった」と土佐氏は振り返る。

「工場の建設において、日本では熟練の職人さんと仕事をすることが多かったのですが、インドでは機械に触ったこともないような人たちたちと一緒に働くことになりました。自分が作業工程を完全に理解していないと、知識も経験もない人には指示を出せないので、彼らと協働することは私にとってもいい経験になりましたね。インド人の仲間たちとは、気が付けば仕事の話だけでなくプライベートの話もするようになり、しっかりコミュニケーションをとれば、現場の雰囲気も温かくなっていく……仕事に国籍は関係ないと感じましたね。試運転期間の最後に、製品として出荷できる品質の鋼板生産に成功した時は、工場の全員で式典を開催しました。60人以上が揃ってジュースで乾杯して皆で喜びあって……胸が熱くなりました。これだけ多くの人たちと一丸となって、大規模な工場の建設をやり遂げたという実感と喜びが、乾杯と共に一気にこみ上げてきましたね。現在はインドネシアのプロジェクトに携わっているのですが、この案件でもインドのプロジェクトの時のように、ぜひ現地に行きたいと思っています。

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学生のころは『きれいに理論で語れる物理と違って、人間の考えは曖昧でよくわからない』と思っていました。でも、その考えはインドでの経験を経て、大きく変わりました。文化のまったく異なるインドの人たちと働くのが、とても楽しかったんです。勤務中にお祈りをしていたり、ベジタリアンが多かったり、仕事に向き合う姿勢が違っていたり……相手がどんな環境で育ってきたか、どんな背景を持っているかを知ると、相手の行動や思考が少しずつ理解できるようになりました。他人の考えは方程式に落とし込めないけれど、だからこそ対話と理解が必要で、わかり合えた時には本当に気持ちがいいんですよね。今はチームマネジメントも意識しながら、多様性を持ったメンバーが活躍できるチームをいかに構築するか、考えています。」

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保全業務で設備を知り、海外の新規工場建設に生かす

自社設備のエンジニアリングを担う鉄鋼業のプラントエンジニアの仕事は、設備が無事に完成したら終わりというわけではない。建設した設備を長く使い込む過程での保全業務も重要な役割だ。「製鉄所の保全業務では、人の役に立っていることが強く実感できる」と、土佐氏はやりがいを語ってくれた。

「設備の一部分でも不具合が出ると、工場の生産全体に大きな影響が出て、ひいてはお客様の企業活動に波及してしまうため、不具合の兆候を掴んで先手を打ってトラブルを未然に防いだり、不具合が起こらないように耐久年数を長くするための施策を考えて提案することもあります。自分が担当した設備において、それらを日々操業する仲間達から『以前のような不具合が起こらなくなった』『安心して作業ができる』と言ってもらえた時の達成感は言葉になりません。当社は国内に複数の製鉄所を抱えていますが、それぞれで共通する課題も多いです。私たち設備・保全技術センターに所属する技術者は、各製鉄所共通の横断的な課題に対して、全社的に取り組むための指揮を執ることもあります。こういった場合には、ただ機械の設計をデスクで考えるだけでは解決できません。いろんな部署を巻き込んでいく交渉力が不可欠です。学生の中には、『機械系エンジニアなら機械の知識があればいい、図面を書くのが仕事だ』と思う人もいるかもしれませんが、『仕事の規模が大きくなればなるほど、専門技術の確からしさに加えて人との対話も重要になる』ということは、私自身も実際の業務を通じて実感していることです。」

また、土佐氏は国内の保全業務に取り組むことが、海外での新規工場建設に活きてくると考えている。

「すでに数十年の歴史を持つ工場では、さまざまな操業改善、保全の工夫が既に実施されていますが、スペースや予算が足りずに実現できていないアイデアもたくさんあります。そこで、過去の改善事例に加え、保全業務の中で思いついたアイデアを現在設計中の新規案件に活用していけば、より性能の高い設備を創ることができます。国内の保全業務で様々な設備を知ることで、海外でよりよい工場を建設していけると思っています。これはまさに自分たちが実際に使う工場を、自分たちの手で作り上げる鉄鋼メーカーだからこそできる仕事であると考えています。私は、学生の頃から『流行り廃りのある機械ではなく、大きくて末長く使われるような工場を作りたい』と考えていました。今、その夢のフィールドを一歩ずつ歩んでいる実感があり、とても充実しています。これからも現場で着実に経験を積んでいって、人々の生活をもっと豊かにできるような工場を、世界中に作っていきたい。そして、自分で企画・設計・立上した設備に対して、隅々まで自負を持てるようなプラントエンジニアになりたいです」

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機械だけではなく、様々な分野のスペシャリストが活躍する場

研究室に届く求人票だけが頼りだった昔と比べ、近年は就職先の選択肢が広がった。しかし、ネットですぐ手に入る情報が増える一方で、“生の情報”に触れる機会は意識しないと減ってしまうだろう。土佐氏も「就活では足を使って情報を集めることが大事」だと、これから就職活動を始める学生に向けてのアドバイスを語ってくれた。

「学生時代、インターネットでなんとなく求人サイトを眺めていても、本当に求めている情報は見つかりませんでした。自分の目指す会社はどんな雰囲気なのか、現場ではどんな仕事をしているのか……結局は現場に足を運んで、見て、そこで働いている方々に話を聞いてみないと、分からないことだらけなんです。工場見学やインターンシップに参加するのもよし、社員にアポを取るのもよし。社会人の先輩たちの話を直に聞くことが、自分に合った未来の道筋を見つける一番の近道だと思います」

最後にあらためて“プラントエンジニアのやりがい”について、土佐氏に思いの丈を語ってもらった。

「自らが考えた計画に基づき、巨大な工場を創り上げる。……プラントエンジニアという仕事には壮大なロマンがありますね。ことさら鉄鋼業において言及すれば、製造プロセスの技術力や製造設備の性能が会社の競争力に直結する業界ですのでやりがいが非常に大きいです。また、鉄鋼業での仕事は、エンジニアリングの業務以外にも幅が広いので、様々な分野の基礎力を持った方が活躍できる業界だと感じます。鉄を作るには、機械だけでなく様々な分野のスペシャリストが必要です。壮大なものづくりやプラントエンジニアリングに興味のある方は、ぜひ一度工場に足を運んで下さい。生産設備のダイナミックさと、そこから生み出される鉄鋼製品の精密さににきっと五感で圧倒されると思います。お待ちしています。」

(取材・文/森祐介)
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