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2016/1/27 UP

  • Interview

変化の激しいIT業界の中で――敏腕システムエンジニアが見つめる“揺るがない本質”

世界中でIT化が進んでいる昨今、私たちの生活の至る所・あらゆるシーンにコンピュータ・システムが組み込まれている。それらを生み出し、日々のチューニングをするエンジニアは、今や社会に必要不可欠な存在となった。アプリやサービスの制作をするエンジニアはその功績が目につきやすい一方で、目立つことは少ないが重要な役割を担っているポジションがある。企業の顧客管理や販売管理、業務アプリケーションから、私たちが持ち歩く携帯電話まで……あらゆるシステムを縁の下から支えている、システムエンジニアだ。
変化が激しいIT業界の中でも、長期間のプロジェクトに携わることの多い彼らは、日々どんな問題と向き合っているのだろうか。大手システム開発会社でインフラエンジニアとして働く竹邉章人氏に、仕事のやりがいや問題意識、そして日進月歩のIT業界において持つべき“普遍的な思考法”について語ってもらった。


[ PROFILE ]

竹邉章人(たけべ・あきと)
東京理科大学卒。2002 年、株式会社富士通ミッションクリティカルシステムズ入社。基盤エンジニアとして働くかたわら、講習会で講師を務めるなど社内の交流イベントに積極的に活動。現在はハード・ソフトに関わらず幅広い領域の業務を担当し、金融機関のシステム開発などに従事している。


SEなのに学生時代にパソコンを触ったことがなかった

コンピュータのシステムが作動するためには、機械とその上にのるソフトウェアが必要だ。そしてシステムエンジニア(以下、SE)は、ソフトウェアを開発するエンジニアと、ハードウェアを扱うエンジニアに大別される。多くの会社ではソフトかハードのどちらか一方を専門的に担っているが、富士通ミッションクリティカルシステムズは、ハード領域のインフラ構築からソフト領域のアプリケーション開発まで一括して取り扱っている。そんな柔軟性のある会社の中で、インフラシステムを構築するSEである竹邉氏はどのような仕事をしているのか。

「私は、金融機関などで使われる業務システムの開発や、大企業が使用するサーバーや社内ネットワークの基盤を構築する仕事をしています。多くの人に関わる大規模なシステムを手掛けることが多いので、常に緊張感を持って業務に携わっていますね。例えば、証券会社の売買取引をするシステムが一時的にでも停止してしまうと、機会損失を含めて何百億という損害が出てしまうケースもあるんです。責任が大きい分、やりがいも大きいです」
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このように社会的責任が大きなSE職。そうしたSEとして就職をしたものの、大学時代はプログラミングの経験はおろか、パソコンすらほとんど触ったことがなかったと話す竹邉氏。そんな同氏が仕事に強いモチベーションを持てるようになったきっかけは、研修後に参加した初めてのプロジェクトにあった。

「私が学生だった当時は、まだウィンドウズ98が出回り始めた頃です。パソコンに触った経験は、卒論の発表資料のためにパワーポイントを少し触ったくらいでした。入社してから2ヶ月間の研修の後、私は証券会社に関わる業務にアサインされました。それが、営業員向けの業務端末と、会社の基幹業務システムを丸ごと入れ替える一大プロジェクトだったんです。初めのうちは、自分の作業がどんな意味を持つのかも分からず、ただ言われたことだけをやっているだけでした。けれども、毎日現場で経験を積んでいくと、だんだんとプロジェクトの全体像がつかめるようになり、1年弱のプロジェクトが終わる頃には、自分の担当する仕事の位置づけがしっかりと理解できるようになっていました。最後に、自分の担当したシステムの一部が問題なく稼働したのを見た時は、とても嬉しかったですね。今でもその証券会社の名前を見かけると『自分の携わったシステムが、あそこで働いている人たちを陰で支えているんだな』と、ちょっと誇らし気に思えるんです」

仕事のやりがいと面白さを知った竹邉氏は、それから積極的に勉強をしながら知識を蓄え、さまざまなプロジェクトに携わるようになっていった。しかし、業務の幅が増えるにつれて、自身の力不足に悩むようになった。

「入社して3年ほど経った頃から、仕事で自分のスキル不足を感じることが増えてきました。そんな時、当時の先輩が『お前、3年やってこのレベルじゃまだまだだ』と、就業時間の後に個人レクチャーをしてくれることになったんです。定時は17時半だったので、その後18時から20時までの2時間、業務上で大切なノウハウをいろいろと教えてくれて……それを毎日、3カ月間も続けてくれたんですよ。正直、最初は『業務時間外なのに面倒くさいな』と思っていたんです。私は教えてもらうだけなのに、失礼な態度ですよね(笑)。先輩は自分の何倍も忙しいのに、オリジナルの教材まで作ってくれていて……先輩に教わったおかげで、自分にできることが少しずつ増えてき、仕事がますます楽しくなっていきました。今でも、そこで教わったことが基盤となり、現場のいろいろな場面で役に立っています。先輩には、本当に感謝してもしきれませんね」

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愛のある先輩の個人レクチャーが転機となり、竹邉氏の仕事観は大きく変わったそうだ。

「そのレクチャーが終わったタイミングで、とあるプロジェクトの責任者を任せてもらったんです。もちろん先輩たちのフォローはありましたが、『ただ言われたことをやる』ような仕事の仕方では、まったく通用しない世界でした。自分でスケジュールを設定して、自分がクライアントとの折衝も担当しなければなりません。SEの技術だけじゃなく、リスクマネジメントや交渉力、コミュニケーション力といった、プロジェクトマネジメント力も求められました。不慣れながらもなんとかプロジェクトを指揮して、手がけたシステムが正常に稼働した時には、これまでにない達成感を味わいましたよ」

古い技術を継承しないと社会が回らない

責任のある立場で仕事ができるようになって、人の上に立ってプロジェクトを仕切ることも多くなった竹邉氏。それから同氏は、社内で技術講習会のプロジェクトが発足し、その立ち上げと講師を任されることになる。

「弊社では、社員と社長が直接ディスカッションする『社長講義』を実践したり、資格取得の補助や社内研修も充実させたりと、社員育成に力を入れています。その育成活動の一貫として、4年前に技術講習会が立ち上がることが決まり、その講師に指名されたんです。立ち上げのメンバーは私を含めて5人。通常業務の合間にオリジナルで教材を作成したりと、準備に手間がかかって大変でした。ただ、その作業をしながら、僕は先輩に教わった経験を思い出していました。『あの時に受けた恩を、下の世代に還元する時が来たんだ』と思うと、自然と力が湧いてきましたね。自分が100%理解してからでないと、他人に教えることはできない。だからこそ、教えるためには理解も深めないといけない……自分にとっても良い勉強の機会になっています」

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そんな努力が実って、竹邉氏らがスタートさせた講習会は応募が殺到する人気講座になった。現在講習会は8期を迎え、最近では「先人の知恵や社内の資源を継承する」という、新しい取り組みも始めている。

「IT業界では日々新しい技術が生まれています。表面上の技術はどんどん変わっていくのですが、『基本的な考え方』や『プロジェクトの進め方』は大きく変わりません。だからこそ、多くの場数を踏んだベテランならではの対応力やマネジメントにおける経験など、大先輩たちの知恵を社内で継承していく場を作ろうと考えました。若手社員の勉強になって、同時に最前線の現場から離れたシニアの方々の活躍の場ができる……上にも下にもプラスになる取り組みになればと思っています。プログラミング言語に関しても、世の中には新しい言語が生まれ続ける一方で、古い言語のまま動いているアプリケーションがまだたくさんあります。現場で活躍する60歳以上の方々は多いですし、彼らしか管理できないものもある。最近ではアセンブラやCOBOLといった古い言語のプログラムをいじれる人も少なくなっていて、それらを継承していかないと回らない部分が確実に出てくるんです。新しいトレンドを追うことも重要ですが、それと同じく“必要な知識の継承”も忘れず意識しなければ、と感じています」

プログラミング言語よりも根本のロジックを学べ

これまでは主にインフラ構築の業務に携わってきた竹邉さんだが、最近では業務システムやアプリケーションの仕事も手掛けている。

「弊社はインフラからアプリケーションまで一括で取り扱っているので、一社内にいながら多様なキャリアパスを描くことができます。専門分野ごとではなくクライアントごとで部署が分かれているので、いろいろなポジションの人の働き方が俯瞰的に見えるのも魅力です。ソフトとハードの業務、両方のフローを理解しておくと仕事の幅が飛躍的に広がります」

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最後に、SEを志す理系の学生へのアドバイスを求めると、竹邉氏は「根本の仕組みを理解することの重要性」を指摘してくれた。

「新旧問わず、プログラミング言語を学生時代に詰め込む必要はないと思います。私もそうでしたが、言語や技術は仕事をしながら現場で覚えていけるものです。今の学生にオススメするとしたら『プログラムがどのように動いているのか』という根本の仕組み、システムの概念を勉強することでしょうか。最近はHTMLで簡単にブラウザが作れますが『なぜこの文字列を打ち込むと、画面にこういった効果を出せるのか』といったコンピュータの基礎的な仕組みがわかっていると、その後いろいろことに応用が利きますよ」

大企業ならではの手厚い教育制度や多様な職業の領域。モチベーションの高い人間は、これらを利用して自発的に成長を遂げ、多様なキャリアパスを描けるようになる……そんな理想的な会社員エンジニアの在り方を体現している竹邉氏。同氏の発言や姿勢からは、物事を俯瞰して捉える広い視野と、流行よりも本質に目を向ける“温故知新”の精神を持つ重要性が、ひしと伝わってきた。

(取材・文/森祐介)
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