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2016/2/9 UP

  • Interview

「理論と経験を駆使して壁を越える」全世界のIT産業を支えるエンジニアのキャリア観

「全世界のIT産業の大半は、日本企業によって支えられている」――大げさに思われるかもしれないが、これは紛れもない事実だ。コンピュータの核を成す半導体は、高純度の多結晶シリコンを溶かして単結晶に育成し、それにスライス・研磨・洗浄などの加工を施した“シリコンウェーハ”が基礎材料となっている。このシリコンウェーハ業界の世界シェアの約6割を、たった2社の日本企業が支えているのだ。その一翼を担うのが、株式会社SUMCOである。
SUMCOで作られたシリコンウェーハは、世界トップの半導体メーカーでも重用されている。その半導体はスマートフォンや自動車、家電など電子化されている数多の電子機器に組み込まれ、私たちの社会生活の基盤を形作っているのだ。
世界のリーディングカンパニーであり、現代社会にはなくてはならない存在となったSUMCOでは、どんなエンジニアがどのような思いを抱いて働いているのだろうか。シリコンウェーハの製造過程の業務に携わっている杉山慶輔氏と酒井健司氏に、仕事のやりがいやキャリア観について、お話を伺った。


[ PROFILE ]

杉山慶輔(右/すぎやま・けいすけ)
1982 年生まれ。2008 年、工学部材料物性工学専攻を卒業し、株式会社 SUMCO に入社。現在はエピ技術部に所属し、シリコンウェーハのエピタキシャル開発、および生産能力改善のための業務に携わる。

酒井健司(左/さかい・けんじ)
1983 年生まれ。2007 年、生産科学研究科機械システム工学専攻を卒業し、株式会社SUMCO に入社。現在は設備技術部に所属し、シリコンウェーハのエピタキシャル工程における装置導入、および品質改善のための装置改造に携わる。


考えて考えて、考え抜く、それがエンジニアの本分

――おふたりは現在、どのような業務をご担当されているのでしょうか。

杉山慶輔氏(以下、杉山) 私は、エピタキシャル・ウェーハの技術開発に携わっています。シリコンウェーハは、単結晶化させたシリコンをスライス・研磨・洗浄することで完成します。この過程ででき上がったシリコンウェーハを、ポリシュット・ウェーハと言います。エピタキシャル・ウェーハは、このポリシュット・ウェーハの表面に、シリコンの薄膜を気相成長させたものです。この薄膜を付加することで、微細かつ高性能な半導体を作製できるようになり、ひいては電子機器の小型化や多機能化につながるんです。

酒井健司氏(以下、酒井) 私の業務は設備技術と言って、エピタキシャル工程に必要な装置の導入と調整を担当しています。具体的に説明すると、彼のようにエピタキシャル技術の開発・改良に携わっているエンジニアから「こんな機能を持った装置がほしい」という要望をもらって、それを元に新しい装置を導入したり、既存の装置の改造をしたりするのが仕事ですね。

杉山 エピタキシャル・ウェーハが要求されるデバイスは、ハイスペックなパソコンに搭載されるMPUや、スマートフォンなどに使われる撮像素子ですね。大手半導体メーカーが製造しているカメラの撮像素子に使われている半導体も、エピタキシャル・ウェーハが使われているんですよ。

酒井 エピタキシャル工程では、お客様のニーズに合わせた技術開発が必要になります。時には薄い膜を求められたり、また時には抵抗の異なる膜を求められたりと、用途によってオーダーはさまざまです。私たちはその都度、高品質な製品を生み出すために最適な開発環境を整えています。

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――業務では、どんな点が大変なのでしょうか。

酒井 理論上では正しく設計に沿って作った装置でも、実際に動かしてみると思った通りに動かないことがあります。そういった部分を、社内の技術者と装置メーカーの意見を聞きながら、うまくすり合わせながら改善していくことには苦労しますね。相手から具体的なニーズを引き出すためには、こちらが丁寧にヒアリングする必要があります。この点は、単純な技術力よりもコミュニケーション力が試されますね。

杉山 私の担当業務は、彼の立場とは違って外部とのやり取りは多くありません。彼の部署が導入した装置を使って、顧客から求められた品質の製品を安定的に生産できるように、最終的な調整をしていきます。なかなか想定しているクオリティのものができずに悩むことも多々ありますが、どうやったらうまくいくかを考えて考えて、考え抜きますね。それが、エンジニアの本分だと思っています。

――日々のお仕事の中で、どのような瞬間にやりがいを感じられますか。

杉山 不思議なもので、現場では机上の知識や理論からはなかなか導き出せないような問題解決の糸口を、経験を積むことで養われるフィーリングが見出してくれることがあります。もちろん、そのソリューションはよくよく検証すれば、ちゃんと理に適った方法なんです。正確に言葉にするのは難しいのですが、単に知識があるだけでは越えられなかっただろう壁を、自分の経験則と仕事勘が越えた瞬間は「やってやったぞ!」と感じます。

酒井 自分が導入した装置が安全に立ち上がって稼働してくれるとホッとしますね。彼が話したように、現場では経験によって積み重ねられる“予測力”が重要になってきます。装置の安全性を確保するには、使う人がどんな行動をするのか予測して、そのひとつずつに対策を打たなければなりません。上司にはよく「人の5歩先まで考えろ」と言われています。それくらい考えを深く潜らせて、「想定外」がなくなるように先回りしようと、日ごろから意識しています。

就活では専門にとらわれすぎるな

――大学時代はどのような研究をされていましたか。

酒井 機械システム工学専攻というところで、物質のエネルギーの状態を自動で計測する測定器の開発をしていました。実用としては、石油の蒸留・分流の効率化に役立つような技術です。ただ、もともとCPUやコンピュータ技術には関心が強くて、趣味で回路を組み上げたりして遊んではいたのです。ですから、半導体への興味も早い段階から持っていました。

杉山 私はもともと教育学部出身で、教師志望だったんです。昔から理科が好きだったので、理科の先生になるための勉強をしていました。けれども、そこで物理や化学などを復習するうちに、段々とサイエンスの勉強をすること自体が面白くなってきてしまって……意を決して工学系の大学院に進学しました。院では主に、有機系の半導体材料の研究に着手していました。

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――就職先として現在勤めているSUMCOを選んだ決め手は何だったのでしょうか。

杉山 一番の決め手は、自分が興味を持った会社の中でも、群を抜いて業績がよかったことです。就活を始めた当初は、誰でも名前を知っているような大手企業への憧れもありました。ただ、「自分が長年働く会社だからこそ、業績と将来性はシビアに判断しよう」と思い、会社四季報を読むようになって。世界的に大きなシェアを持っている点には強くひかれましたね。

酒井 機械屋としてある程度の知識と経験を積んできたことから、就活中は「最先端の技術や設備を扱えたり、生み出したりできるフィールドがいい」と考えていました。その中でSUMCOの工場見学に参加したんです。最先端の設備がそろった広大な工場内を目の当たりにして「こんなところで働いてみたい」と感じたことが、最終的に就職先を選ぶ決め手となりました。

――今後お仕事を続けていく上で、将来的に目指している目標はありますか。

杉山 シリコンウェーハの理想形は“完全に異物がなく、完全に平らな状態”です。現時点でも「甲子園球場の中に紛れた砂一粒大のゴミを逃さない」というレベルで作製や洗浄をしていて、限りなく清浄度の高い製品を作っています。しかし、今以上に質を突き詰めていけば、今よりもさらに細かく複雑な回路をウェーハ上に配線できるようになる。それに伴って、今以上に小さくて性能の高い半導体が生まれてくるはずです。私たちの仕事は表に見えにくいですが、確実に世界中の人々の生活を豊かにするカギを握っています。その点に誇りを持ちながら、もっと完璧に近いクオリティを出せるように、生涯現場で働き続けたいです。

酒井 現在、シリコンウェーハを製造するためのさまざまな装置の多くは、専門の製造メーカーが設計・製造したものに頼っています。それに独自で改造を加えて自社のラインに適応させているのですが、メーカーオリジナルの製造装置だといろいろな要因で仕様が変わることもあります。そうした外的な要因が、自社のシリコンウェーハ製品の製造に支障を来すことも少なくありません。将来的に、こうしたアウトソーシングしている装置の設計・製造を自社で担えるようになれれば……と考えています。そのために、エンジニアリング部門の技術力を、今から底上げしていきたいですね。

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――最後に、これから社会に出ていく理系学生たちに、先輩としてアドバイスをお願いします。

酒井 自分の今の専門にとらわれず、興味のあることにはどんどん触れていってほしいなと思います。私たち2人とも、入社してからの最初の配属先は自分の専門外の分野の業務でした。それでも学生時代に勉強したことは、何年後になるかはわかりませんが、必ず活きる瞬間がやってきます。就活の際にも、自分の専門性に固執して視野を狭くしないように、さまざまな業界に興味を持って調べてみるといいでしょう。

杉山 彼の言ったことにつなげると、現場では理論より経験と実践がものを言う瞬間が多々あります。部署や取り扱うものの性質にも左右されますが、ものづくりの現場に立つ上では、難しい計算ができなくても大丈夫です。経験則でうまくいったことに、後から理論がついてくることも珍しくありません。ですから、就活においては一度、自分の専門も取っ払って考えた方がいいと思います。技術職は入ってからが勝負ですから、自分が気持ちよく誇りを持って仕事ができそうな環境を選べば、自ずと成長も伴うはずです。

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